婚姻規定と貞操義務

ここ何年かで話題に上がったりしている、いわゆる離婚後300日問題。wikipedia:離婚後300日問題
そして再婚禁止期間(民法733条)の問題。
も一つ嫡出推定(民法772条)。
全て親子関係を規定する条文だ。
現代の技術ならDNA鑑定するなりで誰の子どもかなんてわかるものだが、未だにここいらが改正されないのはなぜなのか。




なるほどここには「貞操」観念が深く関係している、というのが読み取れる。


もし子どもが生まれたときに夫がDNA鑑定を依頼したとしたら・・・。
それはつまるところ、妻が他の男と関係があったかもしれない、ということを疑っていることにつながる。
772条の嫡出推定によって夫婦は一般的に他の者との関係はない、という建前を構築しているのである。


それと同じように、離婚後の300日以内に生まれた子は前夫の子となるのも、婚姻関係中に他の男性と関係を持つことを民法は想定しない、いや、想定してはいけないのである。
建前として。
再婚禁止期間についても右に同じ。


だから血縁上前夫の子でなくても、法律前夫の子として扱われる、というちょっと時代錯誤的なことが起こるというわけである。




ここから僕は文化、社会をとても身近に感じられる。
日本における「貞操義務」の観念。
これは間違いなく日本文化が生んだ観念。
日本の倫理が求めたモノ。
この「縛り」が現代社会の足を引っ張る。
ただただこの義務が現代人の規範にそぐわないというのなら話は簡単。
廃止なり改正なりすれば良い。
ところがどうだ、貞操義務の観念は日本人からなくなってなんかいない。
「浮気は文化」ではないのだ。


しかしその観念を貫き通した結果起こったのが上記問題。
なんと整合性がないんだろう。
仕方ないから解釈や通達によって微調整をしている。
大きな声で「貞操概念は死んだ!」と言えないから裏でこっそりゴニョゴニョ・・・。


ああ、社会ってこんなもんなんだ。
僕はこの社会にいても大丈夫なんだなぁ。
そう感じられるのである。

人に「見せる」職業と共通点

山寺宏一トークニコニコ動画で見て一つ思った。
山寺さんは声優業、トーク業、俳優業、となんでもできるなぁって。


この三つの仕事って結構違う能力が必要であると認識している。


声優というのは、「声」のみで演出しなくてはいけない。
やってみればわかるが、普段喋るようなトーン、スピード、そして台詞では全く表現できない。
(さぁ、恥ずかしがらずにアテレコってみよう!絶対後悔するから、下手すぎて・・・)
だから、演出中は恥ずかしいほどの声の抑揚、滑舌、絶対に使わないような言葉を使ってオーバーアクション全開の演技を強いられる。
それができない人は声優としてはダメダメ。
よく俳優が声優業に携わったりするのを見受けるが、大抵棒読み。


トーク業というのは何もない空間を言葉で埋めていく感じ。
内容なんてどうでもいい。
そこいらのファミレスでくっちゃべっている様な内容でかまわない。
重要なのは「間」。
テンポに気をつけて、相手やその場の雰囲気とカチ合わないように演出していく。
一度ネットラジオでもやってみるといい。(さぁ恥ずかしがらずに!)
泣きたくなるくらい何も話せないし、そもそも内容なんてないんだからそれを面白くするためにはどれだけ頭の瞬発力が必要か思い知らされるだろう。


俳優業というのは身体の動きで演じるもの。
台詞なんて大したことない。
言葉を連ねているときの表情、身振り手振り。
佇まいだけで心の変化を表現する。
誰かが喋っているときに自然な振る舞いをしなくてはならない。
やってみればいいさ!!
(上記二つの失態を繰り返した君ならもう何も恐れることはない!)
身体全体を駆使しながら表現しないと、すでに用意されている言葉なんて伝わらないだろう。


他にもさまざまな表現方法があるが、手段によってどれだけ異なるチカラが必要か、「声」を使って演出する手段として共通しているこの3つの例だけでもお分かりいただけたと思う。


こんな「似て非なる」ことを全部ハイクオリティでやってのける山寺さんは頑張っている!(ごめんなさい、締め方わかんなかった・・・)


P.S. 荒川くん、「時かけ」観るときは呼んでね。


三鷹爆発四散】
http://d.hatena.ne.jp/go_west/comment?date=20080808
(これトラックバックになってるよな・・・)

究極のプレイ動画

先日あるきっかけで東方のリプレイ動画を見たのだが(@ニコニコ動画)、ちょっとした感銘を受けてしまったのでここに記すとしよう。


その人の動画はpeercast使って自分で実況しながらプレイしたものを誰かがうpしたものである。
特にテクニックが恐ろしいわけでもなく(もちろんウマいが)、ネタ避けなんてものもない。
というか、私が見た動画に関してはクリア寸前でゲームオーバーという、なんともカッコ悪い終わり方。


では、いったい何が私の心を惹きつけたのだろうか。
まず一つに、実況しながらプレイしていることがあげられる。
「ノーミスでイケた!空気読んでるなー!」
「ここの通常弾幕まだわかってないんだよね〜」
など、プレイ動画に臨場感を与えることができる。


二つに、技術的に親近感が持てるということかもしれない。
クリア動画というものは結局はパターンを覚えて自分のプレイの参考にする、くらいに落ち着いてしまう。
しかし、パターンを駆使することもなく、ただただおしゃべりしながらプレイするのは・・・そう、友達と一緒にゲーム攻略をしている感覚。
(喋っていたせいでエクステンドが取れない動画を参考にするプレイヤはどの世界にもいないだろう)


しかし、私が一番ハッとさせられたのは、プレイヤ自身がホントに楽しそうにゲームをしていることである。
パターンを決めて「ここでボム」「ここまではノーミス必須」「ここは何点稼ぐ」という攻略、高得点を狙うがためにハマっていく窮屈なプレイから完全に解放された世界。
どこでミスしようが変わらないハイテンションでつき進んでいく爽快さ。
彼は東方を始めたばかりの頃の自分を思い出させてくれた。


カタにはまらなくても良い程度にまで技術が向上することによって、かえってカタに溺れていく、よくあることかもしれない。
決して本質を見失わないスタンスを会得したいものだ。


D

轢き逃げと殺人

轢き逃げが殺人罪になることがあるんです。
何年か前だったが、車で轢いた人がそのまま被害者を森まで連れて行って遺棄した事件。
あれはまさに殺人罪に該当しうる事件ですね。


刑法上の殺人には、積極的に人を殺めるものと消極的に殺めるものの二種類が想定されている。
前者はよくある(というのも皮肉な話だが)殺人事件である。
後者は、例えば親が自分の幼い子どもに食事を全く与えずに死なせてしまうというようなもの。
こういうのを「不作為の殺人」なんて言ったり言わなかったり・・・。
つまり、「なにもしなかった」ことが、積極的に人を殺したことと同価値であるような(刑法上だと「同無価値」なんて言ったりするのかな、どうでもいいよね。)場合に殺人罪を構成することがある。


そう、轢き逃げにもそれが当てはまる可能性がある。


ただ単に逃げるとね、(わざと轢いたのでなければw)業務上過失致死罪と道交法のなんちゃら救護義務違反(72条)かな?
法定刑は・・・業務上過失致死罪は最高懲役が10年、道交法72条違反が最高懲役5年、とこんなもん。


それに対して、例えば轢いた後に一旦自分の車に乗っけて病院に連れて行こうとしたんだけども、急にコワくなって人気のないところに遺棄してしまったなんて場合、または死んでしまうかもしれないと思いながらも車の中に長時間放置したなんて場合には、殺人罪が構成される可能性が出てくる。
そうすると刑が・・・最悪死刑まで行っちゃいます。
いや、死刑はあり得ないけど、つまりそれだけ量刑に差が生まれるということ。
まぁちゃんと救護しきれば問題ないんだけどねぇ。なんかチグハグっぽさは否めない。


だから法文には人の手を入れていかないといけない。
文言どおりに割り切って適用なんてできないのです。
まぁあまり入れすぎると司法が立法行為を行なってしまう危険がある・・・というのはまた別の話ということで。


予断だが、中途半端に人の世話を焼くと自分に損害が来ることもあるので注意。(「事務管理」と言います。)

殺人の動機とハードボイルドワンダーランド

保険金殺人。
強盗殺人。
介護疲れの殺人。
秋葉原の事件。
中三少女の父親殺害。


社会は上三つと下二つを区別したがるようだ。
上の三つ(以下甲)に関しては「動機」が社会において「市民権」を得ているとでも言おうか。
そう、いわゆる「わかりやすい」事件なのである。
お金がほしかった、必要だった。
毎日一日中寝たきりの人の世話をしていることに心身ともに疲れきってしまった。
そう、ある程度共感でき、一般の人なら持ちうる感情。
そうすると人はその事件をわかった「つもり」になる。
カタチを把握をすると恐怖が薄まる。
だからそこまで騒がない。


それに対して下二つ(以下乙)は「わかりにくい」事件として問題扱いされる。
なんであんなにたくさん殺したの?殺す必要があったの?
前日まで普通(を装って)に生活していた家族をなんで殺せるの?
全く共感できない。
事件がわからない「つもり」になる。
把握できないから恐怖が消えない。
大変なことが起きた。
社会の危機だ。


でもその区別ってどういう意味があるの?


まず、甲類の事件の動機がわかる、共感できることってわからないよりもずっと危険なことじゃないの?
理解できてしまうということは、自分だっていつそのような行為に走るかわからない。
そして周りの人だっていつそういうことをしたっておかしくない、そんな事件ということになる。
わかるからこそいつもそばにその危険は存在するのである。
「恐怖が弱い」ということは「危険じゃない」と同義ではない。
危険に鈍感になるということだろう。
そして、身近な危険ほど、鈍感にならなくてはいけないことから「理解」が生まれるのである。
(交通事故なんかが良い例だ。あんなに人が死んでるのにそこまで意識にのぼってこない。)


そして僕は思う。
だから甲類の事件の動機だって真の意味で理解できていない。
というか乙類事件と比べても、いくらかの理解もできていないはずだ。
この場合の「理解」とは結局恐怖感、不安感を和らげるためのツールでしかないのだろうと。
そう、「わかった『つもり』になって危険に鈍感になろう!」キャンペーン実施中なのである。
とすれば、上記区別というのは危険が身近にあるかないか、の区別でしかないということになる。


「だから区別をするな」、ということを言うつもりはない。
そうではなくて、上記区別で乙類に分類された事件が社会に危険を及ぼすというような考えはズレているということを言いたいのだ。
「市民権」を得た動機だって社会的危険性を帯びているものはたくさん存在するし、理解されない動機にだって社会危険性のないものがある。
キャンペーンなんかに乗っかって見失わないでほしいと思っているのである。


ちなみに、僕は乙類の例としてあげた事件の動機もなんとなく「理解」できてしまうので、辛いです。

名誉毀損とマスコミ

植草元教授が名誉を毀損されたとして講談社に損害賠償が命じられたらしい。
今日はこの名誉毀損について考えてみた。


名誉毀損というのは刑法上の名前で、民法で言うと不法行為(民709条、710条)にあたるものである。まぁ一まとめにして論じよう。
まず見て欲しいのが名誉を毀損した場合の制裁の程度である。


刑法:3年以下の懲役、禁錮又は50万円以下の罰金。
民法不法行為なので定まった額はないが、植草さんの場合では賠償額110万円。


確かに個人が他人の名誉を毀損した場合には効果があるかもしれない。
しかし、法人、要するにマスコミが名誉毀損行為をした場合、これはとても少額な気がする。
そしてなによりも現代においてもっとも人を脅かす名誉毀損は他ならぬマスコミのそれであろう。
こんな額でいいのだろうか。


今回の事件について言えば、講談社にとっては110万円なんて痛くもかゆくもない額だろう。
なぜなら、植草さんを誹謗、中傷することで得られる利益はそんなものではないから。
というかそこらへんの利益考量した結果、そんな行為をしたのだろうし。
雑誌に掲載することで売り上げが伸びれば100万円そこいらなんて問題ない。
そんなもの経費くらいにしか考えていないかもしれない。
これでは名誉毀損というものが全く抑制力として働いていないではないか。


表現の自由との関係で非常に難しいものではある。
また、名誉という抽象概念についての被害の算定も難しいだろう。
しかしこの壁は乗り越えるべき壁である。
今後の立法政策において、賠償金以外の制裁を模索する必要があると感じた。

The Man Who Sold The World

David Bowieの2nd Albumである「世界を売った男」。


一言で言ってしまえば、狂っている作品。


何が狂っているかといえば、メロディー、歌詞、そしてボウイの声や歌い方が狂っているのだ。
要するに不快である。
とてもまともな精神状態で聴いてはいられなくなってくる、そんな一枚。


しかし勘違いしてもらって困るのは、David Bowieの曲は全体としては狂ってない。
いたって普通、というか綺麗な旋律と歌声なのである。
1stの「Space Oddity」は若くて荒いが、全体としてやわらかい印象を持たせるようなアルバムだし、3rdの「Ziggy Stardust」なんかは心の奥に突き刺さってくるような鋭く美しい旋律に、なにか一つの物語の簡潔を思わせるような感覚を覚えるのである。
それに比べ、「世界を売った男」のぶっ飛びかたったらない!
大学時代に一日中聴いていてよく鬱にならなかったと今更ながら胸を撫で下ろすくらいである。


・・・今、特に狂っている曲をあげてみようと思ったが、全部そうなので無理だったw
個人的には「Black Country Rock」「The Man Who Sold The World」「The Super Man」の3曲がお気に入り。
これは一聴の価値が充分にある。
できれば1作目から3作目まで続けて聴いて欲しい。

Man Who Sold the World

Man Who Sold the World